はなさかじいさん
はなさかじいさん

かしむかし、ある山里に、やさしいおじいさんとおばあさんがおり
ました。 
ある日、おじいさんが家の前で小さな畑をたがやしていますと、とな
りのらんぼうないじわるじいさんのどなる声がしました。
「こら!人の畑に入りよって!」
 きゃんきゃん、きゃん。
 走ってきたこいぬをおじいさんがだきあげると、となりのじいさんが
追いかけてきて言いました。
「そのこいぬは、おらの畑をあらしよったんじゃ。こっちへよこせ!」
 こいぬはおじいさんのうでの中でぶるぶるふるえています。
「わしにめんじてゆるしてやってけれ。」
 おじいさんは、となりのじいさんにあたまを下げてたのみました。
「こんど入ったら、かならずぶったたいてやるからな。」
 となりのじいさんは、おこっていってしまいました。
 こうして、やさしいおじいさんとおばあさんは、このこいぬをだいじ
にかってやることにしました。
 こいぬはシロと名づけられ、あさからばんまでよくはたらきました。
 やがてシロは、めしを食べてどんどん大きくなっていきました。

 ある日のこと、シロがおじいさんのところへきて、きものをくわえて

引っぱります。どこへやら、おじいさんをつれていこうとしているよう
です。
 シロはおじいさんを引っぱって、うらやまにのぼっていきました。
 山のてっぺんまでくると、シロは、
「ここほれ、わんわん。ここほれ、わんわん。」
と、ほえるのでした。
 おじいさんは、ふしぎに思いましたが、いわれたとおりほってみまし
た。
 土をほると、なにやらくわにぶつかるものがありました。
「うん?なんじゃ……、こ、これは。こ、こ、こばんじゃあ。」
 その夜、おじいさんとおばあさんは、生まれてはじめて、こばんをも
ったしあわせをかみしめました。
ところが……
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