はなさかじいさん2


    

そこへ、となりのいじわるじいさんとばあさんがやってきました。二
人は、しょうじの穴からのぞいて、こばんの山を見てしまったのです。
 おじいさんに、うらやまでこばんをほった話を聞くと、いやがるシロ
を、むりやり引っぱっていってしまいました。

 あくる日、シロを引きずって、よくばりじいさんはうらやまへのぼっ
ていきました。
 そして、シロが力つきてたおれたそのばしょをここだとばかりにほる
と、くわになにかかたいものがあたりました。
「出た、出たぞ!うはっはっはは。」
 こばんだと思って、よろこんで手にしたとたん、よくばりじいさんは
こしをぬかしました。
 出てくるは、出てくるは。へびや化けものが、ぞろぞろ、ぞろぞろ。
「よくも、ひどいめにあわせたなっ。」
 おこったとなりのじいさんは、とうとう、シロをころしてしまいまし
た。

 やさしいおじいさんとおばあさんは心からかなしんで、シロのはかを
立てて、そのそばに小さな木をうえました。
 するとふしぎ。その木はずんずん大きくなって、ひとかかえもする大
きな木になりました。
 ある日、二人がお花をそなえようと、はかまでやってきて、その大木
を見上げておりました。すると、その木が、なにか言っているようでし
た。
「うすにしてくれえ、うすにしてくれえ……。」
 二人は、シロの木の言うとおり、その木でうすを作ることにしました。
「うん、そうじゃ。シロはもちが好きじゃった。もちをついてそなえて
やろうかい、のう。」
 おじいさんとおばあさんは、できあがったばかりのうすで、もちをつ
きはじめました。
「ほいしょ。」「あいよ。」
 ぺったん、ぺったん。おじいさんとおばあさんは、なかよくもちをつ
きます。
 うすの中のもちが光りだしました。
「あら、おじいさん。なんでしょう。」
「はやー、ふしぎなもちじゃ。」
 おじいさんとおばあさんは、光るもちを取り出して、ちぎって小さく
丸めます。すると、もちがぴかぴか光りだしたではありませんか。
「こ、こばんじゃあ!」

 そこへまた、となりのよくばりじいさんが顔を出して言いました。
「どうじゃ、わしにうすをかさんか。」
「これは、シロのかたみじゃから。」
と、おじいさんが言うのもおかまいなしに、となりのじいさんとばあさ
んは、うすを持っていってしまいました。
 さっそくもちをつきはじめた二人は、もちがつきあがるのも待ちきれ
ずに、うすの中をのぞいてばかり―。
「じいさん、いっこうにもちの色が変わらんなあ。そうじゃ、丸めれば
いいんじゃろう。」
 二人はもちを小さくちぎり、丸めてならべました。
 すると、白いもちは黒いすみになって、ばちんばちんとはねて、二人
の顔をまっ黒にしてしまいました。
 となりのじいさんとばあさんは、おこってうすを小さくわってかまど
でもやしてしまったのです。

 やさしいおじいさんは、そのことを知ると、それはそれはがっかりし

てしまいました。
 そこで、となりの家のかまどの前へ来て、はいを手ですくい上げまし
た。
「シロ……。」
 せめて、このはいをシロのかたみに、そう考えたおじいさんは、はい
をかごに入れて、だいじに家にもってかえりました。
「このはいを畑にまいて、シロの好きだっただいこんをそだててやりま
しょう。」
 おばあさんがそう言うので、おじいさんははいを畑にまきました。
 はいはかぜにふかれてちっていきます。すると、かれた木が光りだし
さくらの花がさいたではありませんか。
「ばあさんや、見ろ、さくらじゃ!」
 よろこんだおじいさん、ぱーっと、はでにはいをまきました。
 ふしぎやふしぎ、はいがかかると、かれ木に花が咲きました。こうし
て、たちまちのうちにあたりいちめんはさくらのうみとなりました。
「はあ、はるでもないのに花がさいた。」

 村の人たちがおどろいてあつまってきました。
 村から山へ、村から村へ、村から町へ、そしておしろへ―。このはな
しはつたわっていきました。
 はなしをきいたおしろのおとのさまが、けらいをつれておじいさんの
ところへやってきました。
「くるしゅうない。はでにやってくれ。」
「かれ木に花をさかせるぞー。」 
 まいちったはいは、いつのまにか、さくらの花びらにかわっていまし
た。
「日本一のはなさかじいよ。ほうびをとらせるぞ!」
おとのさまは大よろこび。
「そのほうび、ちょっとまった。」
 そこへかけつけたのは、となりのよくばりじいさん。
「わたくしめこそ、日本一の花さかじじい。このはいで、一度にどっと
さかせましょうぞ。」
 よくばりじいさんは、木にとびのってはいをどっとまきました。
「じじのさかせるじじの花あ―。」
 ところが、はいはそのままおとのさまの上へ―。
「はー、はっくしょん、はっくしょん。」
 人のまねばかりしていた、よくばりじいさんは、とうとうろうやに入
れられてしまいましたとさ。
                         (おわり) ★前のページにもどる★                    ★トップにもどる★