○事例１

1939年8月、オハイオ州・ピクアに二人の男の子が産まれた。
だが、生後まもなくやむを得ない理由により別々の家に養子として引き取られていった。一方はオハイオ州・ライマのルイス家へ、もう一方はそこから130km離れたオハイオ州・バートンのスプリンガー家へ。この二家族は交流を持つことはなかったが、奇妙なことに二人の里親は自分たちの子供に、全く同じ名前「ジェームズ（ジム）」と名付けたのであった。二人の運命を結びつける驚くべき絆の始まりであった。そして40年後運命の再会を果たした。お互いの人生について話していくうちに奇妙な運命の一致が判明したのである。
　ともにチェーンスモーカーの二人は同じ銘柄のたばこ、好きなビールも一緒なら、爪をかむ癖。そして、高血圧症から来る偏頭痛まで一緒だった。奇妙な運命を持ったこの2人は一卵性双生児であった。さらに二人の共通点は好みや癖にとどまらなかった。子供の頃に飼っていた犬の名前、最初に就いた職業が保安官補佐、転職先がガソリンスタンド、さらに数年後同じチェーン店の店員。これだけではない。同時期に人生の転機を迎えた二人は、妻の名はリンダ、そして同時期に離婚。そしてその次の妻の名はベティ。初めて産まれた子にジム・ルイスはアラン（ＡＬＡＮ）と名付けジム・スプリンガーはアレン（ＡＬＬＥＮ）と名付けたのである。
これらの偶然の一致の数々を精神学的には「シンクロニシティー現象」といい、東京国際大学人間社会学科の詫摩教授によれば「特に同じ遺伝子を持つ双子は、信じがたい無意識の世界の一致を見ることがあるのではないか。」という。
科学を超えた双子のシンクロニシティー現象、数年前オーストラリアの新聞がこのような事件を報じた。双子のクロミングスキー姉妹の、姉ヘレンはすでに深い眠りに落ちていた。時計が11時を回ったところで、突然胸の痛みに襲われ、そのまま息を引き取ったのである。実はヘレンが苦しみ始めた同時刻、妹ペグは交通事故を起こして即死していた。ハンドルが胸に食い込んだ状態だったという。
　一卵性双生児を襲った戦慄のシンクロニシティーだった。そして、それはジム兄弟にも襲いかかろうとしていた。
その日リビングでくつろいでいたジム・ルイスの胸に激しい痛みが走った。また同じ頃130km離れたジム・スプリンガーも心臓発作を起こしていたのである。恐るべき戦慄の絆、あのオーストラリアの姉妹を死に追いやったシンクロニシティーだった。幸運なことにそのとき駆けつけた救急隊員により、ジム・スプリンガーは一命を取り留めた。すると不思議なことに、ジム・ルイスの胸の痛みも嘘のように消えていったという。
そして、現在二人のジムは、仲良く元気に年を重ねていた。今でも130km離れて暮らしているが、月に1度は会うことにしているという。
　　「私たちの運命は、決して自分一人の物ではない。普通の兄弟にはない何か特別な絆を感じるんだ。」と二人はいう。