月の世界からやってきたかぐや姫の少しSFちっくなお話
竹取物語


(0)物語の始まり
(1)作品について
@内容
A題材
(2)作者について




(0)物語の始まり
 平安時代、仮名(ひらがな、カタカナ)の発達によって、日本語の文章表現の幅が広がっていきました。堅苦しい漢文と違って、日本語をのびのびとつづることができる手立てを手に入れた日本人は、さまざまな文章を生み出していき、文学の歴史が本格的に始まりました。その中でも竹取物語は物語の元祖と言われています。「かぐや姫」という子供向けの絵本も出版されており、話を知っている人も多いのではないでしょうか。では、これから竹取物語はどんな作品か見ていきましょう。


(1)作品について

@作品の内容

『竹取物語』は三部構成になっています。

第一部:かぐや姫の成長物語
ある時、「竹取の翁」という老人が、竹の中に小さな女の子をみつけ、大切に育てることにしました。女の子は異常なはやさで一人前の美しい女性に成長し、「かぐや姫」と名付けられます。また、竹取の翁は、竹から黄金をみつけ、裕福になります。

第二部:かぐや姫への求婚物語
成長したかぐや姫の美しさは世間に広まり、多くの貴公子がプロポーズにやってきますが、かぐや姫はよい返事はしませんでした。それでも熱心にやってくる5人の貴公子に対してそれぞれ難題を与え、それをクリアできた人と結婚すると言いましたが、クリアできる人はいませんでした。そしてついには、帝からも求愛されますが、それも拒否します。



○ちょっと補足 平安時代の結婚
『竹取物語』では、たくさんの男たちがかぐや姫に求婚します。では、その当時の結婚はどんなものだったのでしょうか。
この頃、男性は好きな女性ができると、まず手紙や和歌を何度も送ります。男性の愛が本物だとわかると、女性は返事を書き、それが結婚してもよいというしるしになります。そうすると、男性は女性の家に通って泊まり、朝になると帰ります。3日目の朝に女性の両親と対面し、結婚を認めてもらうのです。つまり、この当時は男性が女性を訪ねるという「通い婚」だったわけです。



第三部:かぐや姫が昇天する物語
さらに、何年かたったある日、かぐや姫は月を眺めては物思いに沈むようになります。心配した老人たちが理由をたずねると、かぐや姫は自分が月の世界の住人であることを告白し、そして次の8月15日の満月には、月から迎えが来ると言うのです。驚いた老人は帝に頼んでどうにかかぐや姫を月にいかせまいとしますが、抵抗もむなしく、かぐや姫は月の世界に帰っていってしまいます。



○ちょっと補足 平安時代の月や星に対する考え
 日本人は、昔から天を「神々が生活しているところ」と考えていました。平安時代の人々も、月や星を眺めながら、自由に空想したりしていました。月の光にしみじみとしたものを感じた人々は、満月だけでなく、三日月、十六夜の月など様々な月を愛し、月見を楽しみました。昔の人も、月に対してロマンを感じていたのでしょうか。また一度、夜空を眺めて月を見てみてください。




A様々な伝説や中国の古典に題材をとる
 『竹取物語』のアイディアの多くは、様々な伝説や中国の古典の基本に題材があります。不思議な子どもが異常な成長を見せる話(化生説話)、男が魅力的な女に求婚して苦労する話(求婚難題説話)、天の女が地上にやってきて、やがて天に帰る話(羽衣説話)といった基本的な説話の型はすでにあったもので、それを上手くまとめることですばらしい作品になっていると言えます。


(2)作者について―〈モノガタリ〉の考え方―
 『竹取物語』の作者はわかっていません。古代においては、「物語」というものは、本来匿名で発表されるものでした。〈モノガタリ〉は、〈モノ〉が〈カタル〉ものです。〈モノ〉とは、ヒトの能力をはるかに超えた存在であり、この世ならざる彼らのカタリをヒトである作者が文字に移すのだ、という考えがそこにはあります。だから、作者は源氏物語のような特殊な例を除いては表面に姿を現しません。ただ、『竹取物語』は、文体やそこからうかがえる豊富な知識から男性が作者ではないかと言われています。



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